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新規事業のアイデアが思いつかないときの考え方

                   
フレームワーク
公開日:2018.01.22更新日:2023年7月19日

「新規事業のアイデアが浮かばない!」と悩んでいる方も少なくないだろう。そういった状況で、劇的にアイデアを生み出すアイデア発想法も数多く存在する。

結論から述べよう。最もオススメする新規事業のアイデア発想法は、「メモ」を活用することだ。つまり、ゼロからアイデアはひねり出すものではなく、いくつかの情報を組み合わせて作るほうがアイデアの精度が高まる。

手を動かして情報を紙面に落として、そのメモを組み合わせるという発想法だ。

しかし、いきなり「メモを書け」と言われて新規事業のアイデアを作り出すことは難しい。その理由はメモをするポイントが明確でないからだ。アイデアをメモする際に大切なことは、どの情報に着目してメモを書くかということである。

今回の記事では、メモを書くポイントを踏まえて、新規事業のアイデアをメモから発想する方法を7つに分けて紹介しよう。

 

【新規事業の立ち上げ・アイデアを出す方法に関する記事】
この記事では新規事業の立ち上げ方法・アイデアの出し方について複数回にわたって解説している。

  1. 新規事業とは?立ち上げで重要なビジネスアイデアの探し方と6つの行動
  2. 新規事業のアイデアの考え方とは?簡単に出すための7つの方法
  3. 新規事業企画書はどう書く?必要な8つの項目を解説
  4. 新規事業のプレゼンテーションは何が大事?押さえておきたい項目とは
  5. 新規事業立ち上げのプロセスとは?22のステップを徹底解説

新規事業立ち上げのアイデアを着想するきっかけ

世界を変えたアイデアメモというと何を思い出すだろうか。

ツイッター創業者ジャック・ドーシーが書いたメモや、アマゾン創業者ジェフ・ベゾスが紙ナプキンに書いたアイデアが有名だが、こうした事業を発案するメモには実は共通点がある。実際世界を変えた創業者の「メモ」には3つの点が盛り込まれている。

  • スポンサー(誰が使うのか)
  • 特徴(決定的な違い)
  • エンジン(グルグルと動き出す仕掛け)

まず誰に使ってもらうのか? そして次にどんな特徴があって決定的な違いは何か? 最後にそれらをどうやってグルグルと循環させるのか?

この3つの点こそ事業アイデアの基本である。そこに競合より圧倒的に勝てることを掛け合わせて、はじめて成功できる事業アイデアとなる。

しかし、こうした新規事業のアイデアをいきなり思いつくことはない。

そこで「スポンサー・特徴・エンジン」をそれぞれの観点からメモをいくつも書き留めて、新しい組み合わせを頭の中で想像することが大切だ。ポイントは様々な観点から繰り返しメモを残すことにある。

ポイントを踏まえて、新規事業のアイデアとなる「きっかけ」をメモする発想法を7つに分けて順に説明しよう。

  1. 自社のバリューチェーンからメモする
  2. 業界全体のバリューチェーンからメモする
  3. 顧客の不満・不安や、熱望・熱狂からメモする
  4. 同業他社の新規事業からメモする
  5. 成長企業の事業からメモする
  6. 海外の成功事例からメモする
  7. 買収や出資案件をメモする

実はこうして色々な観点からメモを残しながら新規事業を発想する方法は、海外のグローバル企業ではトレーニングプログラムになっているほど必要不可欠なスキルとして認識されている。

近年では、アイデア着想には激動する市場の兆しが不可欠となってきており、市場の兆しをリアリティを持って掴みつつアイデアをメモに残す取り組みが活発になっている。

だからこそリモートでも仕事ができる今であってもなお、北米のシリコンバレーや中国の深センには多くの起業家たちや名だたる企業群が集うのである。

市場の変化の兆しのことを「コンペリングイベント」と呼ぶが、このコンペリングイベントこそ世の中の商機ととらえ、会社自ら飛び込みコミュニケーションを取ることも新規事業への注力は必要な施策なってきている。

それでは、具体的な7つの手法をひとつずつ見ていこう。

 

きっかけ①自社のバリューチェーンからメモする

自社の事業活動(バリューチェーン)の中で各部門がどのような機能を担い、会社の価値にどう貢献しているか、そして顧客にどう評価されているかを具体的にメモしてみる。

会社の中にある隠れたバリュー、つまり価値を見つけるためもメモになる。

つまり、会社の経営資源の棚卸を徹底的に行ない、見逃しがちな自社の強みを洗い出してみるのだ。

  • 富士フィルムが膜(フィルム)の技術を応用して、化粧品業界に参入
  • 林業を営むノキアが情報通信業に参入
  • ケチャップメーカーのカゴメが総合野菜メーカー飛躍した話

これらは、新規事業を語る上で有名な話だ。

おそらく参入当時、「市場の兆しをとらえ顧客の悩みを自分たちの強みとなる技術で解決できないか?」と、何通りも新しい組み合わせを発想したはずだ。

自社のバリューチェーンから導き出せる強みには、次のようなものが挙げられるだろう。

  • 信頼されている品質や期待に応えている技術の裏にある品質に応える仕組み
  • 短納期で遅延のない物流ができるメッシュ型のトラック配送ノウハウ
  • 顧客から評価されているウェブサービスのインターフェースを開発したデザイナー部門
  • 小ロット対応や例外対応で培った予見しながら業務ができるルール

ポイントは会社の強みとして表層的に見えている裏にある仕組みや工夫、ルール、ノウハウなどに目を向けることだ。これらを組み合わせることができれば、新規事業のアイデアとなるはずだ。

【関連記事】新規事業企画が思いつかない!原因とおすすめの対処法を紹介

 

きっかけ②業界全体のバリューチェーンからメモする

業界全体のバリューチェーンから発想するポイントは、業界の川上から川下までの中で「いま起きていること」、あるいは「今後起こるかもしれないこと」を拾い上げてみることだ。

「今後起こるかもしれないことの中でも、社会でまだあまり知られていない」できごとを『コンペリングイベント』と呼ぶが、いち早くコンペリングイベントを捉えることが大切になる。

例えば、 車共有サービスのUberの創業者トラビス・カラニックは、「世界で保有されている車の稼働率は5%にも満たない。そしてその稼働を多くの人たちはお金に変えたいと思っている。」ということに着目した。

先述のメモの流儀で言えば以下の様に記載できる。

  • スポンサー・・・自動車を保有しているものの稼働が低い家庭
  • 特徴(決定的な違い)・・・稼働が低い自動車を手軽にお金に変えられる
  • エンジン(グルグルと動き出す仕掛け)・・・移動手段が必要な人とのマッチング

その事実をもとに、乗車サービスや料理の配達に着想し事業化したと言われている。

このように着目したポイントがアイデアの柱になることも多いため、新規事業の発想法として、幅広くシチュエーションをメモしておくことはとても大切だ。

大切なことは、「困っている」「欲しい」といった感情的な表現をメモするのではなく、事実をメモすることだ。

メモの具体例としては以下のようなものがある。

  • 人手不足で配達ミスが増加(物流業界)
  • 外国人観光客が増え接客時に外国語で対応(小売業界)
  • トンネルや橋などのインフラの老朽化(建設業界)

業界で起きている様々なシチュエーションは、問題として顕在化していることもあれば、すでにどこかの企業が解決策を提供していることもある。

逆に実は大した問題ではなく、世の中が過剰反応していることも少なくない。

【関連記事】新規事業の4つの失敗パターンとそれぞれの解決法

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きっかけ③顧客の不満・不安や、熱望・熱狂からメモする

利用している担当者や消費者のミクロな情報も、新規事業のアイデアを発想する上では欠かせない。

必ずしもミクロな情報が業界の声とは限らないものの、たくさんのヒントを見つけられる。

このとき、注目するべきなのは「エクストリームユーザー」と呼ばれる存在だ。

エクストリームユーザーはプロダクトを、メーカーが想定していないような新しい使い方をしたり、過剰とも言える金額を投じていたりする。

彼らの工夫した使い方からは、満たされていないニーズや、対価を厭わないペインポイントのヒントが多く得られる。

自社や業界のバリューチェーンの場合は事実に軸足を置いたメモを書くのがポイントだが、顧客の場合は感情面についてもメモをする。

以下のようなポイントにとくに注目しておくとよい。

  • 特に何にこだわっているのか
  • 特に何が嬉しかったのか
  • 特に何に怒っているのか

こうした感情面と組み合わせてメモを残していくことで、例えば、「こんな使い方は提案できないか」「自社製品以外のメンテナンスもできないか」「こんな機能はつけられないか」といった気づきもあるかもしれない。

また社内にお客様相談室がある場合には、顧客の声(Voice of Customer:VOC)を洗い出してみると良いだろう。

そして、こうした声は人伝ではなく、出来るだけ生の声を聞くことを推奨する。

B2Bであれば、担当者と責任者に直接アポイントを取り率直な意見を聞き、要望から新規事業へつながることもある。

B2Cであれば、消費者に直接話を聞いたり、使っているところを観察したりすることで発見できたことをメモしておくと良いだろう。

 

きっかけ④同業他社の新規事業からメモする

同業他社が新規事業に参入した場合、それを自社の新規事業として検討することも有効である。

具体的には以下のような項目をチェックしておこう。

  • A社が2018年1月に電力サービスを発表
  • B社が2017年12月にドローンを使った農薬散布サービスを発表
  • C社が2017年11月に仮想通貨を使った決済サービスを発表

こうした情報から、「同業の飲食業者が高齢者向け弁当の宅配サービスに参入したのを受けて、自社も検討してみよう」という考え方になる。

新規事業によっては、後発の方がリスクは低く顕在化した問題もクリアしやすい、つまり差別化が図りやすいといったメリットもある。

品質や性能、価格、納期、サービスなどでライバル社と差別化できれば、勝算も見えてくるだろう。

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きっかけ⑤成長企業の事業からメモする

自分が注目している魅力的な成長企業や業種に着目して、新規事業の内容をメモする。

そしてその事業を自社の強みで捉えられないかと模索していくのも、有効な方法として考えられる。

自分の興味関心から継続してその企業をウォッチしていると、時系列で理解しやすくなる。

新規事業の発表を聞いたときには、以下の項目を自分なりに考えてみよう。

  • 何故その新規事業に取り組んだのか?
  • その新規事業で何をしようとしているのか?
  • どうやって儲けようとしているのか?

また、成長企業や成長業種には、多くの企業から提案が持ちかけられているため、より多くの最新情報が集まっていることが多い。

そのため、成長企業や成長業種が行っている取り組みには、多くの発見がある。

 

きっかけ⑥海外の成功事例からメモする

世界的企業が取り組んでいる新規事業をメモするのも有効だ。

こうした企業は毎月の様に様々なサービスを発表しているので、何社か決めて継続的に見続けてもいいだろう。

チェックしておくのは、以下のような企業が最適だろう。

  • 遠隔医療サービスに参入したAmazon
  • 300万円のロボット販売を宣言したTesla
  • 音声AIのスタートアップを買収するGoogle
  • メタバースに巨額投資を行うメタ(旧Facebook)

また、大企業側だけでなく、急成長しているスタートアップ企業が取り組んでいるサービスも新規事業メモの候補になり得る。

スタートアップは自分たちが何者かを分かりやすくアピールするためにウェブページのメッセージを練り上げていることが多い。

Google翻訳を使いながら、ホームページを眺めるだけでもヒントになることが大いにある。

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きっかけ⑦買収や出資案件をメモする

技術が先行する新事業は、毎日の様に世界のどこかでM&Aや業務提携が行われている。

ベンチャーキャピタルが投資しているテーマやスタートアップを追って行けば、新規事業のテーマに出会う確率はグッと上がるだろう。

特に以下の分野では買収や出資が多く行われているので、常に注目が必要だ。

  • ウェブスリー技術
  • メタバース
  • デジタルヘルス
  • N F T
  • バイオテクノロジー
  • LLM

世界を代表する投資家の一人であるマーク・アンドリーセンは、「Software is eating the world.(ソフトウェアが世界を食い尽くす)」と語ったことで有名だ。

彼は成長事業への投資について様々なヒントを公開している。

あらゆるモノとサービスがデジタルに進んでいる今、ネットビジネス以外にも様々なデジタルテクノロジーが出現している。新しい事業の種が世界で次々と誕生しており、こうした事業の種をもとに検討することもできる。

重要なのは、「うちの市場は国内だから」「海外は規制や習慣が違うから」という考え方でスクリーニングをするのではなく、小さなことでも気になったらメモをしておくことだ。

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新規事業のためのアイデアを生み出す手法

こうして集めたメモから、新規事業のためのアイデアを生み出す際に押さえておきたい手法が「フレームワーク」である。

フレームワークは考え方を整理して発展させるための「型」として創造的アイデアを生み出したり、問題解決や意思決定の際に自由な発想を生み出す工夫として活用されたりすることが多い。

アイデアを生み出す際には、特に以下の4つのフレームワークを把握しておくと良いだろう。

  • マインドマップ
  • 形態分析法
  • オズボーンのチェックリスト
  • ブレインストーミング

ここからは、代表的なフレームワークについて4つを紹介する。

 

フレームワーク①「マインドマップ」

マインドマップとは起点とする単語を中心にそこから発想される単語を枝分かれに伸ばしていくことで情報の整理を促す方法である。

頭のなかにある発想を言語化し問題が可視化されるため、問題に潜む課題の起点を概念として整理できる。

 

フレームワーク②「形態分析法」

形態分析法とは、概念を構成する「変数」によって発想を分析し新しいアイデアの発掘を促進する手法である。

例として「新しい遊び」を挙げると「遊び」について「手遊び」「遊具」「テレビゲーム」といった要素に分解できる。

こうして分解した要素を掛け合わせ、新たなアイデアの発見を促す。

 

フレームワーク③「オズボーンのチェックリスト」

オズボーンのチェックリストとは9つのチェック項目に沿ってアイデアを変化させる手法である。

「他に使い道はないか」「他からアイデアを借りられないか」などのチェック項目に従い既存のアイデアを発展させ、今までにない新たなアイデアを生み出す方法だ。

 

フレームワーク④「ブレインストーミング」

ブレインストーミングとは、複数人で決められたキーワードについて思いついたアイデアを書き出す方法である。

「出たアイデアを否定しない」「結論を出さない」といったルールに沿って多くのアイデアを書き出していく。

 

新規事業のためのアイデアを深ぼりする方法

最後に新規事業のアイデア発想に参考になるポイントを以下にまとめておく。

こうした発想法についてはすぐに身につくことはないので繰り返し取り組むことをお勧めしたい。

  • 方法①既存事業の分析を行う
  • 方法②ライバル企業の分析を行う
  • 方法③他業種のビジネス手法を取り入れる
  • 方法④今までにない付加価値がないかを考える
  • 方法⑤身近な悩みを探す
  • 方法⑥世の中のニーズを理解する

それでは、ひとつずつ見ていこう。

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方法①既存事業の分析を行う

新規事業のアイデアを出すための方法のひとつに、「既存事業の分析」がある。

既存事業の分析をするためには、以下の項目を洗い出してみよう。

  • 自社のサービス
  • 自社の商品
  • 売り上げ
  • 社員のスキル
  • 独自のノウハウ

既存事業では既にお客がいて、それらお客に提供する商品・サービスがある。

またこうした業務を継続して提供できる仕組みもある(だから既存事業と呼べる)既存事業を分析する際には「Why(なぜ)」の問いかけをしていきながら洗い出していくことがポイントになる。

  • なぜ、今の顧客は自社と取引をしているのか。
  • なぜ、当社の商品、サービスは売れているのか(あるいは売れ行きが悪化しているのか)。
  • なぜ、毎年商品・サービスを提供し続けることができるのか
  • なぜ、商品・サービスを生み出すことができるのか

こうした「Why(なぜ)」の問いかけを通じて、既存事業の強みが分かれば、どの分野で他社と戦えるか見えてくる。

自社の強みを把握した上で、勝ち目のある新事業に取り組むと良い結果が出やすくなる。

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方法②ライバル企業の分析を行う

コンペティター(競合相手)がやっている新規事業を参考にするのも、新規事業の立ち上げにおいて有効な手段だ。

競合分析を行うと、時に自社商品・サービスに対する自信喪失になることもある。

でも心配しなくていい。自社製品と競合製品が同時にあるということは市場には「選択肢が必要」ということを意味している。

そのため、選択肢が必要という前提に立って、分析をしてみよう。

  • 自社製品と競合商品のそれぞれの選ぶポイントは何か
  • どんな風に比較されているのか
  • 比較のための情報収集はどうやっているのか

コンペティターがすでに成功している事例や商品を詳しくリサーチし、どういった点がユーザーの支持を得ているのか把握しよう。

SNSなどで他社の悪い口コミやクレームを見つけることができれば重要なデータとなるので、こうした情報も探してみるのも有効だ。

繰り返しになるが、優劣を見つけることをよりも、市場・顧客の視点に立って比較の際のポイントを洗い出すことにある。

 

方法③他業種のビジネス手法を取り入れる

自社の競合に限らず、世の中の事例を調べて商機を見つけることも重要だ。

同業界の枠にとらわれず、異業種からも多くのヒントを得られるだろう。

ロート製薬の女性向けの目薬は化粧品のパッケージからヒントを得ていると言われており、最新のテレビのユーザーインターフェースはスマートフォンの操作からデザインしている。

ネット上には情報が溢れているので他業界からヒントを得ることは簡単の様で容易ではない。

そこで、1年以内に投資家からの出資に成功したスタートアップの発表に絞って情報収集すると効率的にヒントを得ることができる。

こうしたスタートアップの多くはコンペリングイベントを掴んでいる場合が多いからだ。

  • どんな市場の兆しを掴んでいるのか
  • どんなサービスを提供しているのか
  • 顧客はどんなことに価値を評価しているのか

 

方法④今までにない付加価値がないかを考える

新規事業のアイデアを出す上で、「今までにない付加価値のヒントを見つける」ことにもチャレンジしてほしい。

ここでいう付加価値とは、製品そのものの価値ではなく、製品を利用・商品するユーザーが他から乗り換える、あるいはこちらを選ぶ際の決定的なポイントになった価値を指す。

例えば、コンビニエンスストアのコーヒーは200円だが、ホテルのラウンジで飲めば1,000円を支払うことになる。

何か大切なイベントの際や重要な商談を行う際は、ホテルのラウンジで飲むコーヒーには、コーヒーそのものの価値以外に、「おもてなしにより気分が良い」「商談の重要性を双方で認識し合える」といった付加価値がつく。

付加価値が価格に見合えばユーザーは喜んで利用する。

このように、付加価値から発想するポイントは「何かから乗り換えるためには?」というテーマにおいては有効な発想法になる。

製品だけでなく、乗り換えるための何かしらの付加価値をつけることができないか、と考えることで製品そのものに大きな価値の差異がなくともビジネス的には大きな違いを生み出すことができる。

 

方法⑤身近な悩みを探す

自社のサプライチェーンに対して調査を実施し、「身近な悩みを探す」という施策も良いだろう。

製造・管理・販売などの各分野において、どのような問題があるのかを洗い出してみよう。

業務や日常で不便に感じていることに、大きなヒントが隠れていることも多い。

多くのユーザーへのアンケートなども大事だが、まずは身近な人の悩みをたくさん集めてみるのも有効な方法といえる。

 

方法⑥世の中のニーズを理解する

世の中の人がどのようなニーズを抱えているのか把握することは、新規事業のアイデアを発想する上でとても重要だ。

自身が専門的な業界に長く居ればいるほど、一般ユーザー目線での不便さや不満が見えにくくなる。

「どのような製品やサービスが欲しいか?」といったアンケートも参考にはなるが、これらはある程度、前情報があるなかでの意見となる。

全くフィルターがかかっていない意見を集めるには、SNSでのちょっとしたつぶやきなどが参考になるだろう。

常に様々な媒体をチェックして情報収集しておこう。

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アイデアが事業につながるかどうかの判断基準

アイデアが新規事業に繋がるかどうかを判断するための判断基準は、次の3つである。

● 蓋然性
● 解決性
● 収益性

アイデアを実際に事業に繋げられるかを判断できる3つの判断基準について、それぞれくわしく紹介する。

判断基準①新規性を見極める「蓋然性」

蓋然性とは、「その事象が起こり得る確実性の度合い」のことである。

一見難しい言葉だが、似たような「必然性」という言葉と比較するとわかりやすい。

必然性は、その出来事が起こることは確実で、それ以外のことは起こり得ないことを指すが、蓋然性は、「おそらくその出来事が起こるだろうが、確実ではない」という事象を指す。

例えば、「感染症予防のためにマスクの購買数が増える」ことは必然性のある事象だが、「マスクを常時着用していることで肌荒れを訴える消費者が増えているので、スキンケアの重要性が高まる」ことは様々なリサーチを経て蓋然性が高い事象だと判断できる。

世の中がどういう方向に変化していく可能性があるのか、どういうものに価値があるとみなされつつあるのかを見極めることが、「蓋然性の高まり押さえる」ことだ。

新規事業のアイデアを探す際には、アイデアそのもののブレインストーミングだけでなく、ヒアリングや事例調査から蓋然性が高まっている事象を見つけてゆくアプローチをしていくと良いだろう。

【関連記事】新規事業が思いつかないときどうする?打開のためのアイデア発想術とは

 

判断基準②解決性

ただ新しさを求めるだけでは本当に顧客が必要としている商品を生み出すことは難しい。

新規性のほかにも、ユーザーの悩みや不安を解決できる「解決性」が重要である。

解決できる課題や問題が核心を突いているほどファンが生まれやすく、開発されたサービスや商品を前面にアピールすることが可能になる。

「砂漠の水売り」のたとえのように、状況や背景に即した問題解決へのアプローチを把握し、商品メリットに導入することが必要である。

 

判断基準③収益性

「収益性」とは自社が安定した収益を得られるかを判断する尺度である。

たとえ人の悩みを解決し、これまでにない新たな発想があっても、実際に利益が得られなければ持続可能ではない。

価値の高い商品であっても生産コストに莫大な費用が必要であったり異常な低価格でしか売れなかったりする場合には、ビジネスモデルとしての運用が難しいのである。

安定して十分な量を生産できなかったり、実現不可能であったりする場合、ビジネスモデルとして成立しない。

 

新規事業のアイデアを形にする5つのポイント

「アイデアを形にする」とは、ビジネスとして軌道に乗せて、しっかりと利益を出せる状態のことを指す。

このステータスになるために、以下の5つのポイントをチェックしておこう。

● ポイント①事業理念を明確に打ち出す
● ポイント②ロールモデルを想定する
● ポイント③徹底的に繰り返しリサーチする
● ポイント④発信力を強化する
● ポイント⑤質より量にこだわる

それでは、ひとつずつ見ていこう。

 

ポイント①事業理念を明確に打ち出す

「成功」を実現させるためには、「なぜ、この事業を自社で取り組む必要があるのか。」について明確な回答が必要になる。

そのためには自社の従業員に対して、事業理念を明確に打ち出すことが重要だ。

上層部だけが把握していても、実際に稼働する従業員一人一人に想いが伝わっていなければ成功しないケースが多いだろう。

社内で統一された事業理念をしっかり持っていれば、顧客にも自然と伝わる。

社内の雰囲気の良い企業は信頼度も高くなりやすいので、事業理念の共有は大切な業務のひとつと言える。

 

ポイント②ロールモデルを想定する

アイデアを成功させるためには顧客がどんな動機で情報を探し、自社商品・サービスにたどり着き利用するのかという「一連のロールモデル」を想定することが重要だ。

顧客がどのようなプロセスで購買に至るのか、そして、どのくらい満足してくれるかをできるだけ具体的に想像してみると良いだろう。

一連のロールモデルの行動パターンを想像することで、これらに合った施策を実施できるようになる。

満足度を上げることで新規事業が上手くいく可能性も上がるだろう。

 

ポイント③徹底的に繰り返しリサーチする

顧客のニーズを徹底的に繰り返しリサーチすることは、新規事業の成功にとって必要不可欠である。

顧客が求めていないものを提供しても当然受け入れられず、失敗に終わる可能性が高まるだろう。

また競合の製品やサービスについても隅々までチェックしておこう。

先発の他社の動向は、非常に参考になるデータだ。

事業をローンチした後も継続してリサーチし続けていき商品・サービスのアップデートを行っていき、自社の運営に反映させよう。

 

ポイント④発信力を強化する

新規事業のアイデアを広く世間に届けるには、発信力が欠かせない。

昨今、もっとも発信力があると言われているのはTwitterやInstagramなどのSNSだろう。

その他にも公式ホームページやLINEなど、様々なツールを使って発信力を強化することが重要だ。

サービスや製品を作っても、顧客に届かなければ意味がない。

発信する際のポイントは「継続すること」である。1回きりで終わらせず、コンスタントに発信を続けていくことが大切だ。

 

ポイント⑤質より量にこだわる

新規事業の立ち上げ時は、顧客のプロフィールもバラバラだったり、利用動機も様々だったりと方針を定めきれないことが多い。

そこで質の良い顧客を見つけて絞り込んでしまう前に、まず多くの見込み顧客に接点を持つこと、つまり量という視点で事業運営を行うことが良い。

立ち上げ時点で質にこだわりすぎると、集まる情報が少なくなってしまうので、バリエーションも減ってしまう。

初期段階では、まったく関係ないと思えることでもメモしてできることの種を増やしていくことも有効だ。

 

新規事業のアイデアの整理・まとめに使えるフレームワーク

最後に新規事業の立ち上げをしながら良いアイデアが思い浮かばなかったり、多くの意見が出ても上手くまとまらなかったりすることがある。

そんな時におすすめの3つのフレームワークを紹介しよう。

  • マンダラート
  • KJ法
  • マトリックス法

それでは、ひとつずつ見ていこう。

おすすめのフレームワーク①マンダラート

新規事業の実行アイデアをまとめるのに便利な、マンダラートとは?

【概要】

  • 仏教の曼荼羅とアートを組み合わせた造語
  • 1つのアイデアから連想して目標を達成させる手法

【メリット】

  • シンプルで分かりやすく取り入れやすい
  • 抽象的だったものを具体化しやすい

【使い方】

  • 9つのマスにアイデアを書き込み、そこから連想するアイデアをピックアップする
  • 関連するアイデアが把握でき、さらに深堀りできる

おすすめのフレームワーク②KJ法

新規事業の実行アイデアをまとめるのに便利な、KJ法とは?

【概要】

  • 1960年代に開発されたデータの整理方法
  • 学校教育や研修などでよく利用されている

【メリット】

  • アイデアをしっかりと可視化できる
  • ロジカルシンキングにまとめられる

【使い方】

  • 付箋やカードにアイデアを書き、同じ分類と思えるものをまとめる
  • グループ化されたら、さらにそのなかで深堀りして、意見やアイデアをまとめていく

おすすめのフレームワーク③マトリックス法

新規事業の実行アイデアをまとめるのに便利な、マトリックス法とは?

【概要】

  • 2つの変数からアイデアを広げる方法
  • タテとヨコの2軸でアイデアを展開していく

【メリット】

  • 多角的な目線でアイデアを検討できる
  • 情報が整理しやすい

【使い方】

  • タテ軸とヨコ軸に別観点からの項目を書き出す
    例:タテ軸に年代、ヨコ軸に主力商品を書き、どの層がどのようなシーンで使うか導き出す

最後に:メモから新規事業の実行アイデアを発想する

ふとした気付きを書いた1枚のメモから新規事業に発展する実行アイデアが生まれる可能性も、多いにあるだろう。良い情報をキャッチするためには、常にアンテナを張っておき、様々なことからアイデアを着想する習慣をつけておくことが大切である。

新規事業が軌道に乗るためには、改善を素早く繰り返していくことが鍵を握る。
普段からのコミュニケーションを絶やさずに準備が欠かさず、実行すると決めたらすばやく実行する、その繰り返しを続けること、そして顧客のコンペリングイベントにあわせて新しい実行アイデアを出し続けていく必要があるだろう。

 

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この記事の監修者

監修者の写真

株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

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