スマートスピーカーのビジネス利用事例:AIスピーカーは何ができるのか
公開日:2018.01.23更新日:2018年3月6日
スマートフォンはもはや時代遅れと言われる時代が来るかもしれない。
2017年10月についに日本にスマートスピーカーが上陸した。GoogleとAmazonから発売され、購入した人たちも多いのではないだろうか。
海外では日常生活に限らず、各企業がビジネスとしてスマートスピーカーに参入しているが、今回はスマートスピーカーによるビジネス利用展開の可能性を紹介しよう。
スマートスピーカー(AIスピーカー)とは、音声操作できるデバイス
スマートスピーカーは、人間の音声を認識できる機能を持つAI(人工知能)を備えたデバイスである。
2017年の流行語大賞に「AIスピーカー」という単語でノミネートされたことで認知した人も多いだろう。この2つの言葉は基本的に同じものを指している。
スマートスピーカーのAIはスマートフォンにもすでに搭載されている機能である。
- AppleのSir
- GoogleのGoogleアシスタント
スマートスピーカーは厳密に言えば、AIが機器の中に組み込まれているのではない。ユーザーの音声を聞き取ってAIに接続することで、返答やアクションをAIの対話によって成立できる様になっている。
例えば、Googleホームであれば、「OKグーグル、今日の天気は?」と機器に向かって音声で質問すれば、デバイスは全方向に音声を認識して聞き取った音声をAIが判断、「今日の天気は晴れです」と男性や女性の声で返してくれる。
リモコンとしてのスマートスピーカー
スマートスピーカーの真価は、ネットに接続しているということだ。
まだ万能ではないが、アラームやニュース、テレビやエアコンの操作といった単純なものについては、スマートフォンやリモコンを使わずに操作を実行できる。この「音声だけで操作ができる利便性」が最大の特徴と言って良い。
エアコンの様な家電製品と接続するためには、スマートスピーカーに赤外線を発信するハブを接続することで実現できる。これらハブは数千円で購入できるため、拡張にかかるコストはそれほど大きくない。
それにより、Amazon echoであれば、「Alexa、エアコンをつけて」と音声で命令を出すと、エアコンを自動で切ってくれる。
また、接続された家電製品を同時に操作する設定もできるので、「Alexa、ただいま」と言うとエアコン・テレビ・照明のスイッチをすべて同時につけてくれる。
部屋にある家電製品が全てリモコンで操作できるならば、利便性は非常に高くなるのは間違いない。
日本国内のスマートスピーカー
現在スマートスピーカーは日本では「Google Home」、「Google Home Mini」が2017年10月に発売され、翌月「Amazon echo」が日本に上陸した。2018年6月には、Appleの「Home Pod」というスマートスピーカーも発売予定だ。
複雑な質問への回答については、機器ごとに差がある。ただし、音声認識の精度については、Google HomeもAmazon Echoも非常に高く、子供から大人まで自然な問いかけで音声認識してくれる。
スマートスピーカーで広がるビジネスの新たな可能性
日本ではスマートスピーカーのビジネス展開にまだ馴染みがないかもしれないが、海外ではスマートスピーカーを自社事業に活用した取り組みがすでになされている。
この記事ではビューティー用品やスキンケア用品、香水で世界的なブランドを持つESTEE LAUDERによるスマートスピーカーの活用事例を紹介する。
今後は日本でも次々とサービスの発表がされることは間違いない。
事例:ESTEE LAUDERによるスマートスピーカーの活用
ESTEE LAUDERは、Google Homeと連携したアプリ「ESTEE LAUDER Nighttime Expert」を開発することを、2017年11月に発表した。
「ESTEE LAUDER Nighttime Expert」は、ユーザーがGoogle Homeに対して、夜間のパーソナルスキンケアについて質問を投げかけると、スマートスピーカーがユーザーの質問に回答する仕様になっている。これを繰り返すことで、ユーザーは、パーソナルスキンケア習慣形成ができると言うサービスである。
また「ESTEE LAUDER Nighttime Expert」を一通り使い終えると、ユーザーはESTEE LAUDERの店舗にて、当ブランドの一押し商品を無料で体験できる機会を獲得できるため、ユーザーのリピートを促進することができる。
スマートスピーカーが築く優位性の可能性
始まったばかりの取り組みのため、実際どの程度ユーザーからの反応があったのかは公表されていないが、スマートスピーカーの多くは自宅内に置かれており、どんな取り組みが効果を示すかが他社からはブラックボックスになってしまう。
そのため多くのユーザーに利用されていることが明らかになった頃には、先行優位性が築かれてしまっているのもスマートスピーカーの特徴である。またスマートスピーカーは、直接消費者の問いかけや質問のデータを取得することができる。仮に夜間のスキンケアの悩みが、毎日リアルタイムに10,000件収集できていたとすると、そのデータの価値は計り知れない。
音声であることよりも、使用するタイミングでのデータであることに大きな価値が秘めていると言えるだろう。
今回、ESTEE LAUDERによるスマートスピーカーの活用事例を紹介したが、すでに北米では多くの企業がその活用を模索し始めている。利用者にどれだけ便益を提供できるかは、まだまだ発展の余地はあるとはいえ、ユーザーからの情報を集めることができるならば、マーケティング戦略上重要なIoTデバイスになることは間違いない。
スマートスピーカーを取り入れたマーケティングの本当の意義
本事例から、スマートスピーカーを活用したビジネス展開が現実性を増してきたのが分かる。
まだ数は少ないが、今後スマートスピーカーのような未来型デバイスを活用したマーケティング施策が増えてくるのは間違いない。どれだけ利用者を増やせるかという課題はあるものの、スマートスピーカーに限らず新しいデバイスをいち早く事業に取り込んだマーケティングを行うことは市場での優位性獲得において重要であり、その可能性を検討するだけでも大きな価値があるだろう。
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この記事の監修者
株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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