デプスインタビューとグループインタビューの使い分け
公開日:2018.09.06更新日:2023年5月23日
消費者の価値観が多様化している。
昨今、マーケティングリサーチにおいて、アンケート調査だけでなく、ユーザーの定性的な声を把握するための「定性調査」の重要性がますます大きくなってきている。
定性調査では、アンケートの設問では見えない、消費者のより深いニーズや悩みを探ることができるからだ。
定性調査には、グループインタビューとデプスインタビューがある。どちらも、「人から話を聞く」という点では同じだが、実施人数や時間、掛かるコストが異なる。
そこで本記事では、「今回の調査では、グループインタビューとデプスインタビューのどちらを実施するべきか」という質問を取り上げる。
双方のメリットとデメリットを挙げて、マーケティングリサーチの目的と予算に合わせて調査手法を選択できるよう、その使い分けについて解説する。
グループインタビューとは、1対複数人にインタビューする調査
グループインタビューとは、ある商品の嗜好や購買行動、ライフスタイルなどの共通点を持った人同士を集め、複数人でインタビューを行う方法だ。
一般的にモデレーター(いわゆる『司会者』)1人に対して、5〜6人程度の参加者を集めてインタビューを行なう。
進行はモデレーターからの質問の投げかけや、参加者同士のディスカッションを通して、参加者から意見を集めたり、試作段階の商品への反応を見たり意見を聞いたりするのが一般的だ。
グループインタビューは、多くの人からの多種多様な意見や反応を得ることに向いている。
一方で、一人一人の価値観やライフスタイル、購買の深層意識、具体的な購買プロセスは探る場合はデプスインタビューを行なうと良い。
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グループインタビューのメリットとデメリット
グループインタビューのメリットは次の2点である。
- グループダイナミクスが期待できる
- コストパフォーマンスが良い
一方で、デメリットも2点指摘できる。
- 1人の深掘りに向かない
- 牽制が生じる場合がある
○メリット1:グループダイナミクス
グループインタビューの最大の特徴は『グループダイナミックス』による効果だ。
グループダイナミックスとは、人間が集団に所属することによって、集団から影響を受けたり、集団に影響を与えたりするという原理のことだ。
大勢でのディスカッションを通じてグループダイナミックスが働くことで、お互いに刺激を受け合い、時に思いもよらなかったアイディアが出たり、多種多様な意見を得ることができるのがグループインタビューの大きなメリットといえる。
○メリット2:コストパフォーマンス
形式にもよるが、1対1で行うデプスインタビューと比べると、一度に大勢を対象にすることができるので、被験者一人あたりの調査費用を下げることができる。
様々な意見を一度のインタビューで集めることができるため、定性調査の中では効率的であるともいえるだろう。
×デメリット1:1人の深掘りに向かない
一方で、グループインタビューのデメリットも存在する。
グループインタビューのトータル時間にもよるが、2時間で6人のグループインタビューを行なうと、1人あたりにかけられる時間は大体20分程度しかない。
この短時間で、参加者それぞれから深い意見を得るのは難しい。
×デメリット2:牽制が生じる場合がある
また、グループインタビューは大勢の前で実施するため、男性グループで起こりがちな課題として、お互いに牽制しあってしまい、通り一遍な回答に終始してしまう場合もある。
デプスインタビューとは、1対1で話を深掘りする調査
次に、デプスインタビューを見ていこう。
デプスインタビューは、モデレーターと調査対象者の1対1の形式でインタビューを行い、調査対象者の心理状態やライフスタイルなどを深く探る方法である。
1人にかける時間は60分〜120分と長い。
基本的にはモデレーターによる質問形式で行われるが、用意した質問だけに囚われるのではなく、各質問やそこから派生した内容を深掘りしていくことにその特徴がある。
そのためグループインタビューと比べるとモデレーターの力量やスキルの依存する部分が大きい。
デプスインタビューのメリットとデメリット
デプスインタビューのメリットは次の3点である。
- 心理状況やライフスタイルを探ることができる
- 本人が自覚していない本当の声が聞ける
- ユーザーニーズの本質を突くことができる
一方で、デメリットも3点指摘できる。
- とにかく時間がかかる
- コストがかかる
- 合意形成がやりにくい
○メリット1:心理状況やライフスタイルを探ることができる
グループインタビューと違い、デプスインタビューでは調査対象者とじっくり時間をかけて対話することができる。
そのため、調査対象者の深い心理やライフスタイルを探ることができるのが大きなメリットである。
○メリット2: 本人が自覚していない本当の声が聞ける
商品に求める期待やニーズだけではなく、「なぜ、その商品を買いたいと思うのか」という質問を、生活スタイルや、経済的な価値観、様々な要因から多面的に聞くことで、本人も気づいてない理由を探っていくことができる。
○メリット3:ユーザーニーズのコアを突くことができる
消費者の深層意識を深掘りできることは、商品コンセプトやペルソナ設定など、商品開発におけるコア部分を策定する上で重要なインプットになる。
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×デメリット1:とにかく時間がかかる
デプスインタビューは一人に多くの時間を割き、さらに個々に実施しないといけない。
さらに、実際のインタビュー時間は、設計段階で多少のゆとりを持たせておく必要がある。
そうなると、1日で実施できる件数は少なくなるので、グループインタビューと比べると効率が悪い。
×デメリット2:コストがかかる
また、誰に話を聞くかという選定がとても重要になる。
対象者のリクルーティングも複雑になるし、話を聞き出すモデレーターの費用も高くなる。
そのため、同じ人数を対象にしたグループインタビューと比較してコストが高くなりやすいのがデプスインタビューのデメリットである。
×デメリット3:合意形成がやりにくい
一部企業では、「デプスインタビューは、ターゲットユーザーセグメントを統計的に代表する訳ではないため、グループインタビューと比べてN数(被験者の総数)が少ない」という理由で、商品開発に関わる担当者の合意形成には使いにくいという意見も出ている。
デプスインタビューとグループインタビューの使い分け
ここまで述べてきた内容をまとめると、デプスインタビューとグループインタビューは次のように使い分けると良い。
- グループインタビューは、多くの対象者から多様な意見を効率的に収集することができる。商品に対するユーザーの様々な反応や多くの意見が知りたいときはグループインタビューが適している。
- デプスインタビューは、ペルソナ策定などライフスタイルや購買動機、購買過程の深層意識を理解したい場合に適している。
調査予算の視点でも大きな違いがある。
- 予算が限られている中で、できるだけ多くの人数を対象に定性調査を行いたい場合は、グループインタビューを選択するしかない。
- 精緻なペルソナ設計を行うために、ターゲットを深く理解したい場合は、デプスインタビューが最適だ。予算が限られている場合は、対象人数を絞り込んで行うのが良いだろう。ただし対象者の選定は慎重に行いたい。
今後の定性調査:リモートインタビューの台頭
数年前から、遠隔で行うインタビューサービスが登場し始めている。
これらサービスはリモートインタビューあるいはオンラインインタビューと呼ばれる。
こうした定性調査のメリットは、子育てをしていて外出が困難な主婦や海外に住んでいる日本人など、インタビュー会場に訪問できない消費者も対象にインタビューを行うことができることだ。
またコスト面でも通常のインタビュー調査よりも低い傾向がある。
今後は、定性調査の活用する機会はますます増えていくと思われる。
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この記事の監修者
株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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