カスタマージャーニーを作成する目的とマップ作成上のポイント
公開日:2019.03.10更新日:2023年4月20日
商品開発などの新規事業開発では、「ユーザーがどの様に商品・サービスを利用するか」を最初から最後まで総覧で理解するために、カスタマージャーニーマップを用いてディスカッションする。本記事では、カスタマージャーニーマップの作成上のポイントを紹介しょう。
カスタマージャーニーとは何か?
カスタマージャーニーとは、消費者が商品購入に至るまでの過程を描いたものである。
- どんなタイミングで接するか
- どんなメディアで気づくか
- どこに接触するか
- どのようにして興味を持つか
- どんな刺激やアプローチを受けて購買にまで至るか
- どんな購買後の評価を下すか
こうした消費者の行動を時系列的に明らかにしたものをいう。また、その顧客の心理・行動を可視化したものを特に「カスタマージャーニーマップ」と呼ぶ。
カスタマージャーニーの意義
カスタマージャーニーの元になる顧客心理・行動モデルは従来から存在した。AIDMAやAIDASモデルなどである。それらの多くは店舗での販売を前提としたもので、店内外の広告や店舗の存在の発見による接触から、従業員からのアプローチなどに伴う心理・行動分析であった。
しかし、近年のインターネットやスマートフォンの普及に伴い、顧客は自主的に商品情報を探索し評価するなど、その行動様式は複雑化、不透明化している。そのため、特に近年普及したO2Oビジネスに対応するため、「AISAS」(注意→関心→検索→購買→情報共有)モデルを基本にして顧客の購買行動を把握しようとしている。
カスタマージャーニーの3つの効果
カスタマージャーニーは顧客の心理状態や行動パターンを可視化し、共有するため、以下のような様々な効果が期待できる。
1.顧客行動の一覧把握は共有化に有効
経営理念・行動指針として「顧客第一主義」を掲げる企業は多い。しかし、多くの場合、お題目に終始している場合も多くみられる。本当の意味での「顧客目線」を貫くには、まず顧客の心理状態や行動様式を、間接部門を含めた全社員で共有化することが求められる。
カスタマージャーニーを共有するのは部門間での共通認識の構築に有効である。
2.マーケティング担当者の思い込みを払拭
伝統的な企業であればあるほど、マーケティングに関する業務は分業化されていく。例えば、販売促進部門における、マスメディア担当、Web担当、SNS担当、チラシ担当といった具合である。
それにつれて各部門の業務は専門化し、洗練されていくが、反面、顧客の全体像は把握しづらくなる。各部門ではその業務の洗練さや業務量が目標となっていきがちになる。その結果、顧客ニーズはさらに掴みにくくなり、マーケティング目標は達成されなくなる。カスタマージャーニーは、専門化されたマーケティング担当者に原点回帰させ、収益性を向上させる効果がある。
3.新規事業開発の有効な手段
カスタマージャーニーでは、顧客の行動や感情を浮き彫りにすることが出来る。そのため、既存のビジネスモデルを、カスタマージャーニーマップに起こし、不満点を明らかにして解決策を練ることによって新たなビジネスが発想される。一見、ボトルネックになっている部分にこそ、新しいビジネスのヒントがあるのだ。
カスタマージャーニーの活用、作り方のポイント
カスタマージャーニーはネットビジネスを中心に導入が進んでいるが、既存のビジネスにも導入が可能であり、新規事業開発や競合企業との比較分析にも役立つ。
カスタマージャーニーは以下の様に顧客の購買プロセスを横に取り、顧客の行動、顧客のインサイト(感情)、そして気づきを一覧でまとめる。顧客セグメントによって、どういう行動に特徴や違いがあるのか、どのインサイトに課題があるのかを視覚的に理解することを助けてくれる。
以下、それぞれの活用シーンでのポイントを見ていく。
ネット通販
AISAS モデルベースでのカスタマージャーニー活用の典型例はネット通販である。ネット通販では、消費者はどんなサイト経由で商品HPに到達したか、SNSではどんな関心を持っているか、どんなキーワードで探索しているか、実店舗以外では実際に購入しているサイトはどこか、決済方法は何かなどをカスタマージャーニーを用いて見える化にしていくことが、改善の近道となる。
まず、最低限必要になるのがGoogleアナリティクスなどのアクセス解析だ。アクセス解析では、どのようなユーザーがきて、どのようにしてどのような商品ページにたどりついたのか、脱落したポイントはどこかなど、まさに実際のカスタマージャーニーそのものを分析できる。
サイト管理者はこうした分析結果を元に新たなカスタマージャーを築くことで、意図的にユーザを誘導することができるようになり、効率的で即効的な施策を立てることが可能になる。ネット通販においては、実際の数値計測を元に、いかに正確なカスタマージャーニーを作成できるかがポイントになるだろう。
消費者心理が影響しやすい業界での活用
顧客が心理的な動きに応じて行動を大きく変えるビジネスの場合は、想定される顧客から消費者パネルを組織し、インタビューなどを通じて顧客の購買行動、その時々の心理をトレースし、顧客が商品選択に悩むタイミングやブランドをスイッチするタイミングを発見することができる。
例えば、就職活動ナビサイトや保険サービス、婚活サービスなど、消費者の微妙な心理状態が購買に影響するサービス業界などは不満要素も多く、潜在的にチャンスも多いと考えられる。そのため、そうしたユーザーの不満要素や心理状況をカスタマージャーニーに書き出して、重点的に対策を立てることで、既存ビジネスの改善はもちろん、新たなビジネスチャンスを発見することも出来る。
こうした業界におけるカスタマージャーニー作成のポイントは、ユーザーの心理に対して客観的な視点で眺めることだ。不満的要素は商品やサービスの提供者にとっては、耳が痛いことが多いが、そういった点を客観的に観察できる様になって初めて使えるカスタマージャーニーを作成することができるだろう。
まとめ
インターネットやスマートフォンの普及に伴い、顧客の購買プロセスが複雑になり、さらに見えにくくなってきている。そこでプロセスを可視化して分析できるカスタマージャニーの役割は高まってきている。
カスタマージャーニー作成における恩恵は単にユーザー行動の把握やそれによる改善ポイント抽出だけではなく、組織間に共通認識をもち、共同検討するツールとしても役に立つだろう。
カスタマージャーニー作成と運用における大事なポイントは、事実を俯瞰して観察できることにあり、ユーザーや時代の変化に合わせ、正確なカスタマージャーニーをアップデートし続けることである。
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この記事の監修者
株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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