B2B企業がVRでビジネスを加速させるための4つの活用
公開日:2018.01.22更新日:2018年1月28日
2016年のVR元年を経て、VRを活用したビジネスはまさにこれからという状況だ。現在ハードウェアが市場の9割以上を占めているが、Superdata社の発表によれば、2020年の世界全体のVRにおける売上高は約283億ドル(約3.1兆円)で、その内訳はハードウェアが121億ドル(約1.3兆円)、ソフトウェアが162億ドル(約1.8兆円)と、半々の割合になってくる。
つまり、これからはソフトウェアの勝負ということになる。今回は、VRの仕組みや現在の用途に加えて、B2B企業における新規事業の方向性を考察する。
VR技術の概要
VRとはバーチャルリアリティの略で、仮想現実のこと。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)といわれる体の動きを瞬時に正確に把握できる装置を使い、コンピュータで作り出された仮想現実の世界を体験するシステムである。
VR市場規模
MM総研によれば、2016年の日本におけるVR市場は、次の見通しでまだ市場規模は小さい。
- AR関連市場:59億円
- VR関連市場が27億円
- ヘッドマウントディスプレイ市場:55億円
しかし2021年度には、市場規模は大きく跳ね上がるという予想だ。
- AR関連市場:355億円(6倍)
- VR関連市場:710億円(26倍)
- ヘッドマウントディスプレイ市場:1046億円(19倍)
つまり今後3年間で実に6倍〜19倍に急成長する市場ということだと言える。
B2C企業における様々なVR活用用途
VR市場で最も重要なことは、用途の可能性がとても広いということだ。すでに市場形成が始まっているゲームやアミューズメント業界以外にも例えば業界別に見れば、次のような活用事例がある。
不動産、建設業界
住宅の間取り体感や、リフォーム後の状態をシュミレーションする事により、顧客への販売促進とクレームを減少させることが出来る。
小売
洋服のバーチャル試着や家具配置の確認などに活用できる。例えばバーチャルモール内で家具などサイズ感が必要なものも、VRによって購買決定まで完結させることができるだろう。また、これらの機能は販売促進に効果があるとともに顧客の納得性を高める効果もあるため、返品というコストや煩雑さを解消してくれる。
サービス業
旅行のルートを疑似体験したり、結婚式場の施設の雰囲気を事前に体験したりして購買に繋げることが始まっている。事前に体験できるというベネフィットが、結果的に購買決定の後押しになるという期待だ。遠隔地にあるリゾートマンションの販売などでは、すでにVRサービスが導入され始めている。
自動車
自動車の試乗や自動運転の体験、工程管理や修理手順の3D化に活用され始めている。試乗の代わりにVRを使うのは以前からもあったが、自動運転や運転アシストなど、より実際のシチュエーションで実感が求められる機能については、VRの効果は大きいと言える。
医療分野での活用
手術の手順を事前にシュミレーションすることや、学習用ツールとしての活用、精神疾患治療、失ったはずの手足からくる幻肢痛という難病の治療方法としての導入が始まっている。B2P(Business to Patient)での活用はまさにこれから始まっていくと考えられる。
教育用
星座や自然環境を学習したり、博物館を訪問したりする体験学習用に活用が始まっている。
社会課題を学んだり、異国の文化を学んだりする時にも活用できる。
B2B企業におけるVRビジネスとは何か
以上の様に、B2C企業におけるVR利用のコンセプトは、「体験による納得性の向上」にある。納得性の向上が、購買率向上にどれだけ寄与できるかが定量的に把握できる様になり、それが費用対効果としてマッチしてくれば、ますますVR市場は成長していくだろう。
VRのハードウェアとソフトウェアがこなれてくることによって、2018年以降は、B2Bビジネス、つまり業務用途での活用も広がってくるだろう。そのキーワードは「人の代わりになること」だ。VRを利用する企業は、自社のコンテンツやノウハウを異業種や異技術を持つ企業とコラボレーションさせることで収益源の多様化できる様になるだろう。業務用途では次のようなものが考えられる。
1.商品開発業務での活用
VRコンテンツを製作するプロ用ツールソフトウェアの発展は、2020年を待たずに次々と登場することが予測される。さらに、これまで専用ソフトで作られてきたゲーム用などに加えて、360°の動画編集が出来るようになったアドビ社のソフトウェアの登場してきた様に、今後は、広くビジネスで利用されている汎用ソフトウェアに標準で編集機能などが実装されていくことが考えられる。それにより、商品開発のコンセプト段階でイメージアップしたり、試作品の別バージョンを確認して操作してみるなど、ビジュアライゼーションとテスティングにおいて活躍するはずだ。これまで、多くの手間とコストがかかっていた作業がVRによって大きく削減されるのは間違いない。
2.Eラーニングでの活用
人口減少に伴い、人材採用と人材の囲い込みは同業者間の熾烈な競争になっていくだろう。それにより、ますます企業は人材開発に投資していくことが予想される。例えば、これまで技術継承に不可欠だった実地研修などで対面での研修とVRでの研修がハイブリットで運用されたり、あるいは新人研修で営業現場での提案演習に使われたりするなど、多くの受講生が同時に学ぶことが出来る利便性と、より臨場感のあるOJTの両立で活用が進んでいくだろう。
3.環境アセスメントでの活用
国や自治体が行う土木事業には環境アセスメントが必要であるが、地域住民に説明会を開けば必ず反対意見は発生する。その原因の一つに「分からない」「イメージできない」ということが挙げられている。例えば、事前にVRによる環境影響評価を体感することによって、地域住民に理解を得やすくなるといったシーンにも有効になっていくと考えられる。
4.異業種による連携(極限環境での作業)での活用
ドローン技術と融合してより遠隔地の作業を行ったり、極限環境や危険な場所に飛来して複雑な操作を体や手の動きで調査したり、これまで多くの実証実験で行われてきたことが実用化されていくだろう。高速のストリーミング動画配信により簡単にリアルタイムにVR体験を共有するだけでなく、遠隔操作できる様になれば業種を超えた需要の創造が期待できる。
まとめ:VRが「人の代わり」として価値を発揮する
日本市場では、現状アミューズメント市場が先行しているが今後「人の代わり」になることが明確になり、それら業務をVRが担うことによって、B2B企業におけるVR活用は一気に拡大していくものと考えられる。企業の中でどの業務がVRと親和性があるか、Fit-Gapを考えることで、新たなビジネスを創造していくことができるだろう。
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この記事の監修者
株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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