ペルソナ分析の5ステップ:自社商品を絶対に買うペルソナの作り方
公開日:2019.08.10更新日:2023年4月20日
ライフスタイルを重視して購入される化粧品や家電、雑貨、自動車などは「みんなが欲しいもの」ではなく、「あなたが欲しかったもの」を提案しなければ、消費者は見向きもしない。
それはモノ(機能)が欲しいのではなく、自分のライフスタイルに合ったコト(生活)を実現させたいからだ。
具体的な例で言えば、「みんなが欲しい車」で良かった時代には一律のマーケティングが効いていたが、ライフスタイルに合わせて、収納力や乗り心地、シートアレンジのように多彩な選択肢が必要になった昨今では、「自分に合ったライフスタイル」に対するアプローチが必要不可欠になっている。
今日の商品開発などの新規事業開発の現場では、ペルソナの作成を行っている。そこで本記事ではペルソナの作り方について紹介しよう。
ペルソナとは最も理想的な1人の購買者
ペルソナとは、商品のターゲットを具体的に描き上げた最も理想的な人物像のことだ。例えば、20代男性と60代男性がデジタルカメラを購入したとしよう。 前者の20代男性は、デジタルカメラを買うために、事前にスマートフォンで徹底的に検索し、更にtwitterやInstagram、Amazonなどメディアで商品レビューをチェックし、更に価格.comで最安値をチェック、そして納得した上で購入した。 一方、後者の60代男性は、テレビで放送されたデジタルカメラの通販番組を見て、説明を聞いている欲しくなりフリーダイヤルに電話をして購入した。この二人が同じデジタルカメラを買ったとしたら、企業はどの様にターゲットを設定すれば良いのだろうか。 属性マーケティング上では、「20代男性」と「60代男性」は異なるターゲットになる。しかし、仮にこの両者が、デジタルカメラについて近しい価値観やライフスタイルを持っていれば同じ訴求が通用することになる。 ペルソナ分析とは、属性だけでは絞り込みにくいニーズを明確にするためのターゲット設計の方法だ。色やモチーフ、シンボルなど情緒的な価値を活用するブランド開発においては、ペルソナ設計は必須の作業となっている。そして、出来上がったペルソナは、Webデザインやパッケージデザイン、プロモーション企画を始めとするマーケティングにおいて重要な判断基準となる。
ペルソナ分析の5ステップ
ペルソナ分析は大きく3つのステップによって行われる。
- ターゲットユーザーの抽出
- コンセプト需要調査
- ペルソナ仮説の設定
- 仮説のブラッシュアップ
- ペルソナの共有
それぞれのステップを順に説明しよう。
1.ターゲットユーザーの抽出
新商品開発を行う際には、消費者のニーズを絞り込みニーズに対応するコンセプトを設定する。このコンセプトを具体化する上で、「どんな人が絶対に買う顧客になるのか」を検討するのだ。 この段階ではまだペルソナが設定されていない。商品特性からいきなりターゲットの発想や設定をするのは大海原で宝物を探すようなものであり、無謀だ。そこで、「類似製品の顧客情報の収集」と「顧客層の顧客情報の抽出」という2つの作業を行なう
1-1.類似製品の顧客情報の収集
まずは類似商品の顧客情報を収集する。収集方法はアンケートやインタビュー調査でも自社の会員パネルでも良いだろう。また店舗販売を実施しているのであれば、ポイントカード入会時に記入してもらった属性情報(住所、年齢、性別、職業、趣味等)、ネット通販であればGoogleアナリティクスの情報によって地域、直前に閲覧したHP、時間帯、閲覧頻度、検索ワード、購入商品などを調べる。こうして想定される顧客に関する情報を集めるのだ。
1-2.購買層の顧客情報の抽出
さらに、その特定の商品・サービスを購入している顧客のうち、実際に購入が多い層の中から無作為に顧客情報を抽出する。パレートの原則を活用すると、上位2~3割の顧客で7~8割の売上を達成している。自社の売上貢献割合を勘案した上で、よりコアな上位層に絞って抽出する。こううしてより精度の高い顧客像を描くことができる。
2.コンセプト需要調査
次に、抽出したターゲット層に対して、商品コンセプトを提示し、インタビューやアンケートで評価を行う。これを「コンセプト受入性調査」と呼ぶが、コンセプト合致度が高い消費者に関して、消費パターン(自社以外も含むブランド・価格)、ライフスタイル、行動パターン(習慣、週末の過ごし方など)、考え方、趣味に関する自由発言項目を作っておく。
2-1.アンケート調査に自由記入欄を設ける
アンケート調査を行う際は、アンケート項目に自由記入として理由も記述できるようにしておくと良いだろう。その理由欄によって、ある程度サイコグラフィック(心理)要因が掴みやすくなる。
3.ペルソナ仮説の設定
コンセプト受入性調査で高評価だったターゲットについて、属性情報やライフスタイル、価値観などのデータからペルソナの仮説を設計する。ペルソナの仮説設計としては以下の項目がある。
〈基本情報〉
- 氏名
- 居住地
- 年齢
- 性別
- 結婚の有無
- 家族構成
- 同居、別居
- 学歴
〈仕事に関する情報〉
- 職種
- 所属部門
- 役職
- 勤続年数
- 年収または世帯年収
- 情報収集の方法
〈ライフスタイルに関する情報〉
- 趣味
- 嗜好品
- 週末の過ごし方
- よく口にする言葉
- 人生や仕事の目標、課題
- 良く購入する商品やサービスとその理由
- 良く利用しているメディアと使い方
- 憧れているブランド
- 所有している好きなブランド
4.仮説のブラッシュアップ
こうして描き上げたペルソナ仮説をブラッシュアップするために、調査パネルに事前スクリーニングをかけて調査対象者を絞り込み検証する。仮説が正しければペルソナに近い被験者からは、商品コンセプトの評価は非常に高くなるはずだ。
ペルソナ仮説を再検討する方法
ペルソナ仮説の商品コンセプトの評価結果が著しく悪い場合は、仮説設定の何かに誤りがあるはずだ。ワークショップを活用してそのズレを議論する。時間的・予算的な余裕があればインタビューにより、ペルソナ仮説の商品に対する思いや深層心理を知ることも有意義だろう。
5.ペルソナの共有
上記の調査・分析情報をもとに商品を確実に買ってくれるという確証ができる1人のユーザー像が出来上がれば、最終的なペルソナを確定していく。ペルソナを確定させる際には、重視するペルソナ項目を決めておくといいだろう。 例えば、「氏名」というのはペルソナを具体的に想像する際には有効だが、実際にはどんな氏名でも良いので重要度を下げる。しかし、「年収または世帯年収」や「憧れているブランド」といった項目は価値観を表現するので重要な項目、という風に決めておく。
まとめ
消費者の判断基準の中でブランドの影響力が強くなっている今、デモグラフィック要因だけでなく、サイコグラフィック(心理)要因もターゲットを設定する上で重要になってきている。ペルソナは、ライフスタイルや価値観といったサイコグラフィック(心理)要因を分析してターゲット情報として設計・共有するツールと言えるだろう。 ただし、サイコグラフィック(心理)要因はデモグラフィック情報と比較すると、感覚的・恣意的になりやすいため、繰り返し検証することで精度が高まってくる。しかし「このタイプの消費者(ペルソナ)は、自社商品・ブランドに対して必ずお金を払う」ということが理解できていることは、商品開発・マーケティングを行う上で非常に強力だ。
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この記事の監修者
株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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