トレーサビリティの意味と事例:デジタルトランスフォーメーションによる将来予測
公開日:2019.02.12更新日:2019年2月7日
トレーサビリティは決して新しい考え方ではない。トレーサビリティとは、「対象製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」を明らかにするための仕組みのことだ。あらゆる原材料の調達から生産、消費そして廃棄に到るまでを追跡可能にするトータルシステムを実現することを指す。
この言葉は品質管理が必要な食品などの輸送において使われ始めた。しかし、現代においてこのトレーサビリティがデジタルトランスフォーメーション(以下、『DX』と表記)の到来によって変わろうとしている。
本記事ではDXによって変わるトレーサビリティを紹介しよう
トレーサビリティはサプライチェーンの透明性を高めるもの
トレーサビリティは、「追跡可能性」という意味であり、「Trace(追跡)」と「Ability(可能性)」を組み合わせた造語である。
当初は運送業で使われる用語であったが、現在は生産から流通までのサプライチェーン全体の透明性を高めるという意味で、トレーサビリティが活用されている。
現代の消費者はインターネットなどの様々な方法を活用することで、その商品をどんな人・業者が生産しているのか、どのように生産されているのかなどを確認できるようになっており、トレーサビリティは運送業界以外にも広がっている。
トレーサビリティが注目される背景
トレーサビリティが注目される背景には、消費者の購買行動の変化がある。従来の企業によるマーケティングは、大量生産したものを安く売るというものだった。
しかし、そうした手法は今の時代では通用しなくなっている。消費者はインターネットを活用して、商品の作られた背景など様々な情報を集めることができ、それが購買意思の決定に大きく関与しているからだ。
トレーサビリティとミレニアル世代
特にその傾向は、デジタルネイティブであるミレニアル世代で顕著である。彼らは物を大量消費するわけではないが、自分たちが気に入った製品にお金を惜しむことはない。
一方。購買に際してはスマートフォンなどを活用し、その商品が購買するに値するものなのか様々な角度から分析を行っている。
特に欧米の若者の間では、ヴィーガニズムなどのように単に商品のスペックだけでなく、その商品が適切なプロセスで作られたものであるか、動物虐待によって作られたものでないかなどが購買を左右するようになりつつある。
企業は真の意味で良い商品を提供しないと、ミレニアル世代に働きかけることは難しいのだ。
トレーサビリティの事例:ユニリーバによるパーム油サプライチェーンの透明性向上
大手消費財メーカーのユニリーバは、世界で初めてパーム油の農家から生産工場に至るまでのサプライチェーン全体の透明性を高める取り組みを発表した。
パーム油産業は、約620億ドル規模の産業であるが、世界最大の生産国であるインドネシアにおいて、森林伐採や人権侵害が問題視されていた。パーム油は、農家から出荷されてからサプライチェーンに乗るまでに、加工所や製油所を経由する。
しかし、その過程で代理店などの複数の仲介業者を挟んでおり、非常に複雑なプロセスを経ているため、不当な買値をつけられるなど、農家が不当は扱いを受けるなどの社会問題も発生していた。
過去10年間、消費者グループは、パーム油が発端となった森林伐採や人権侵害にたいして、ユニリーバやペプシコなどのバイヤーへの抗議活動を行ってこともある。ペプシコは、インドネシア農園での労働虐待の実態を主張されたことを受け、パーム油供給業者からの調達を停止した。
今回、ユニリーバはサプライチェーンの透明化活動の一環として、自社のパーム油サプライチェーンに関わる300以上のサプライヤーと1,400以上の製油所を明らかにしたが、これはパーム油産業の透明性向上とトレーサビリティの実現のためとしている。
同社はこうした行動が、森林伐採や人権侵害などの社会課題解決に不可欠であると語っているが、こうした多くの人手を介した複雑なサプライチェーンが透明化されることにより、商流が適切に管理されて業務が効率化されるメリットもある。
また、効率化のためのデジタル化は既存サプライヤーの介在を不要とするDXにつながる可能性も高いだろう。
まとめ
現代社会では、特にミレニアム世代を中心に商品の生産プロセスを含む商品全体の質が購買意思決定に大きく関与しており、この傾向はますます強まっていくと考えられる。もはや透明性が高いことが当たり前になり、将来トレーサビリティができていない商品は消費者に選択されない可能性もある。
企業はトレーサビリティを積極的に導入することで、自社の生産活動の透明性を高めるだけでなく、それら情報を消費者に共有して顧客との信頼関係の構築に力を入れる必要があるだろう。
また、そうした生産過程の透明化を実現するためにデジタライゼーションが進み、DXを実現することが社会から期待される様になると予測している。
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この記事の監修者
株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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