クルエルティフリーとはなにか?ミレニアル世代を中心に支持されるクルエルティフリーの影響力
公開日:2019.03.12更新日:2019年3月7日
ブランドイメージが売上や収益に強く影響するコスメティクスを中心にクルエルティフリーへの注目が集まっている。クルエルティフリー(cruelty-free)とは、動物保護の観点から、商品や商品開発の過程で、動物を傷付けたり、動物テストによって殺したりしていないことを示すビジネスポリシーのことである。本記事では、クルエルティフリーが支持されている理由を考察しよう。
クルエルティフリーとはなにか?
クルエルティフリーとは、直訳すれば「残酷性がない」という意味であり、医薬品や化粧品用品などの開発・製造において、原料確保や研究などのために動物を殺したり、動物実験を行ったりしないというポリシーのことである。
ヴィーガンとクルエルティフリー
またクルエルティフリーは、完全菜食主義者を指す「ヴィーガン・エシカル」あるいは「ヴィーガニズム」とも呼ばれる。ヴィーガンは毛皮のコートなどのような目に見える動物虐待だけでなく、化粧品における動物実験など、目に見えない部分でも動物を不必要に苦しめない生き方をすることを選択している。
化粧品開発における動物実験の現況
我々が普段使用している医薬品や化粧品の多くは、ウサギやラットのような動物の犠牲に成り立っている。人体への安全性確認のために、ウサギの目に化学物質を強制的に注入したり、口から体内に化学物質を投入したりするという実験が頻繁になされているのだ。
このような動物虐待は当然、ヴィーガンの人々にとって許容できるものではく、様々なボイコット活動が起き、ヴィーガニズムが広がりつつあるヨーロッパでついに2013年に化粧品に関わる動物実験が完全禁止された。
この流れはヨーロッパだけでなく、ブラジルで動物実験禁止法が施行されたり、アメリカでも人道的化粧品に関する法案が議会に提出され、程なく可決されると目されたりするなど、世界的にも広がっている。
クルエルティフリーが市場にもたらす影響
クルエルティフリーは、広がってきたとはいえ海外でもまだどちらかといえばニッチな分野といえる。しかし、クルエルティフリーはヴィーガンの比率が高いミレニアル世代を中心に強く支持されており、彼らの支持は今後も増加し続けるだろう。
実際にイギリスを見てみると、イギリスには現在542,000人のヴィーガンが存在するが、これは10年前に比べると3倍以上の数字であり、明らかにヴィーガンが急増している。ミレニアム世代の得意とするSNS等を利用した波及効果も考えると、今後はさらにそのスピードが加速すると予想される。
実際にヨーロッパ市場では動物実験がされた化粧品を販売できないなど、市場への影響は大きなものになっているが、これにアメリカなどの先進国が追従すると世界の先進国のほとんどで動物実験がされた化粧品を販売できなくなる未来もそう遠くないだろう。
日本のクルエルティフリーの状況
一方、日本においては、化粧品メーカーにおいて今も動物実験が当たり前のように行われており、クルエルティフリーに関して世界から遅れをとっている状況といえる。しかし、日本もクルエルティフリーを無視できなくなっている。現在、日本の企業の一部は動物実験をしない製品をヨーロッパへ輸出し、動物実験を行った製品を中国に輸出するなどの対応を行ったりしているが、そうした表面上の対応では今後さらに広がるクルエルティフリーの流れに追従するのは難しいだろう。
クルエルティフリーの事例「MAC」
化粧品・スキンケアメーカーのエスティローダー配下の「MAC」は、インスタグラムで自社製品のメイクアップブラシには動物の毛を利用しないということを発表した。同社は革新的な技術をもって、動物の毛に劣らない優れた機能を持つ合成繊維の開発に成功したとしている。合成繊維は吸収性が高いため、クルエルティフリーに配慮するだけではなく、クリームを少量で済ますことができるメリットもあわせもっており、現代技術を用いることでクルエルティフリーと製品機能の向上の両方を実現した形だ。
エスティローダー自体はまだ粧品に関わる動物実験が完全禁止されていないアメリカに本拠地を置く企業だが、今後ミレニアム世代を中心にさらに広がることが予見されているクルエルティフリーの流れを見越し動いたことになる。言うまでもなく、化粧品販売においてミレニアム世代の支持は極めて重要だ。「MAC」のようにヨーロッパ以外の世界の多くの企業が今後この流れに追従すると予測される。
https://seekingalpha.com/article/4113577-unilever-invests-beauty-bakerie-millennial-beauty-products
まとめ
クルエルティフリーはニッチな市場と思われてきたが、ヨーロッパのミレニアム世代を中心に急速な広がりを見せている。動物虐待は重要な社会課題の一つであり、世界の先進国が本格的に取組みはじめていることから、今後ますます広がりを見せていくであろう。
長い目で見れば、社会課題に逆行したビジネスを続けることは難しい。現時点では日本でクルエルティフリーに対応している企業は非常に少ないが、そう遠くはない将来、クルエルティフリーへの対応せざるをえなくなる日が来るであろう。
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この記事の監修者
株式会社フィンチジャパン 代表取締役
早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。
出版
PR Times記事
『https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>』
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