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サステナビリティをビジネスの中心にすることで得られる4つのメリット

                   
海外レポート
公開日:2018.01.22更新日:2022年9月22日

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海外では近年サステナビリティをCSR活動やチャリティ活動の一環ではなく、事業戦略のテーマとして展開するビジネスモデルに注目が集まっている。社会の持続や社会課題の解決への取り組みを企業がビジネスとして行い、それを自社の商品やサービス成長につなげるというサステナビリティ経営が重視されるようになっているのだ。

ここではユニリーバなどが取り組んでいるサステナビリティビジネスを取り上げ、サステナビリティとは何か、その具体的な事業の方針や内容、背景などを紹介しよう。

サステナビリティは、CSRの延長にはない

「サステナビリティ」とは社会を持続可能な状態にするという考え方だ。そして、サステナビリティを重視する経営では、企業が事業活動により環境や社会への負荷を考慮したり社会課題を解決したりすると同時に、経済的利益も得ようとするものである。

例えば、温暖化対策への支援表明として行われる従業員による植林活動や様々なNPOへのサポート・寄付といった活動は多くの企業で行われており、それらはCSR(corporate social responsibility)と呼ばれている。つまり企業体として社会的責任を担っていく取り組みに位置付けられており、それら活動から直接的に経済的利益を得ることを目的としていない場合が多かった。

海外大手企業が推進するビジネスモデルとしてのサステナビリティ

近年、ユニリーバやP&G、ネスレなどが積極的に行っているサステナビリティ活動は、CSR活動と大きな違いがある。

それは、『社会的責任を担う目的=経済的利益を得る目的』として、2つの目的を両立することに主眼を置いている。

彼らは、“持続的に”社会的責任を担う活動を続けるためには、経済的活動を直接的に結びつくことが良いと考えている。その背景にあるのは、持続可能性に優れたブランドを選好する消費者が増え始めていることにある。そのため、彼らは社会的責任を担える商品・ブランドでなければ市場で生き残れない、消費者に選択されなくなる、と考えているのだ。従って、CSR活動の延長でサステナビリティ活動を定義しておらず、ビジネスとして取り組むことにこそ意義があると言っているのである。

事例:ユニリーバのサステナビリティ重視の経営

ユニリーバの経営ビジョンは「環境負荷を軽減し、社会に貢献しつつビジネスを成長させていく」というものである。そして、同社はこのビジョンを実現するため2010年に「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(以下、USLP)」を導入した。USLPは、そのコンセプトの啓蒙や発信のために世界中で動画配信を行っており、各国のサイトで取り組む意義について明確に伝えている。そしてUSLPは、同社の事業で、以下の4つの点で大きな貢献を果たしているという。

1.ブランドの成長に貢献する

ユニリーバは、サステナビリティをブランド戦略の中核に据えることで、ブランドの成長を加速させている。具体的には、「環境や社会に配慮した製品・サービスを利用したい」という消費者ニーズを捉えるため「サステナブル・リビング・ブランド」を構築し展開しているのである。

サステナビリティを軸に置いているブランドは、ダヴ、リプトン、ベン&ジェリーズ、ヘルマンズのほか18のブランドで構成されている。

2016年おいてこれらブランドは、他ブランドに比較して、実に50%も速く成長し、ユニリーバ全体の売上成長の約60%を確保するまでになっていると発表した。

つまり、同社のサステナビリティ重視の経営が、直接的に自社の成長に多大な貢献を果たしているといえるだろう。

2.コスト削減に貢献する

USLPはコスト削減にも貢献している。同社は、USLPのポリシーに基づき、廃棄物の量、エネルギー、原材料、及び天然資源の使用量を削減したり、効率化したりする取り組みを行い、コストの削減に努めている。

2008年以降で生産工程での環境効率化の推進を行い、工場の改修や新設を行った結果、7億ユーロ(約830億円)超のコスト削減を実現している。

 

3.リスク低減に貢献している

同社は、サプライチェーン全体でサステナビリティの視点を組み込み、その取り組みについても積極的に情報開示している。例えば、気候変動の影響などによる原材料の調達が困難となり得るリスクに備えるために農業ビジネスへの参入を表明しており、2016年末までに原材料として利用される農産物の51%が、持続可能に調達できることを達成したことを発表した。

また、上記のエネルギーや原材料等の使用量の削減により、資源価格の変動に伴うリスクへの対応力も強化させている。

4.信頼の強化に貢献している

ユニリーバは、サステナビリティ重視の経営活動そのものが、消費者を含むさまざまなステークホルダーとの絆を強めると考えている。USLPは、現在だけでなく将来の社員を魅了しており、世界34カ国において「大学生が選ぶもっとも働きたい企業」の消費財部門で同社は、選出され続けている。

 

サステナビリティ経営が求められる理由・背景

もちろん、サステナビリティ経営が求められている本質は、「サステナビリティ=儲かる」ということではない。事実として世界中で持続困難な状況が起きていることにある。

世界的に社会の持続困難な状態になってきている

人口増加、食料不足、資源の枯渇、開発での環境破壊・公害、飢餓・貧困、人権問題、気候変動、などにより社会が持続困難な状態に陥りつつある。そのため欧州や米国などでは企業のサステナビリティに対する直接的かつ持続的な貢献が求められるようになっているのだ。

「持続可能な開発目標(SDGs)」がビジネスチャンスとなり得る

企業がSDGsにビジネスとして取り組むことへの機運が高まっていることも現状の大きな要因だろう。2015年9月に、「持続可能な開発目標」 (SDGs)が国連総会で採択され、各国で「貧困、不平等・格差、気候変動のない世界をめざす17の目標」を達成できるように取り組みが始められている。

ビジネスと持続可能な開発委員会(Business & Sustainable Development Commission)の推計では、SDGsの達成に向けた取り組みによって、多くの有望な市場機会が生まれるとしている。推計データによれば、最大12兆ドルの経済成長とともに3億8千万人の雇用の創出が期待されているのだ。SDGsに取り組む企業は、新たな成長の機会を手に入れられる可能性がある。

また、SDGsの実現に向けては新たな事業を創造していく必要性に迫られることもあり、サステナビリティ経営の実践がイノベーションを起こす契機にもなるだろう。

サステナビリティをビジネスモデルに組み込む方法

持続可能性に優れたブランドを選好する消費者が増え、「CSRを重視する消費市場」の規模が拡大する今日ではサステナビリティを含むCSRの実践は業績向上も期待される。

ユニリーバのようにサステナビリティを経営の中心に据えている企業では、社会課題の解決と経済的利益の獲得を両立させることで、自社の業績向上や成長につなげている。

CSRを推進する日本企業でも、慈善活動や環境負荷への軽減などの社会貢献が中心となっているケースが少なくない。社会貢献だけでなく、ブランドの成長や競争力の機会を得るためにサステナビリティをビジネスモデルの提供価値に据えた事業戦略を検討してみてはどうだろう。

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この記事の監修者

監修者の写真

株式会社フィンチジャパン 代表取締役

高橋 広嗣

早稲田大学大学院を修了。
野村総合研究所経営コンサルティング部入社。
経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルティングを実施。
2006年に当社を創業し現在に至る。
以来、一貫して事業開発プロジェクトとスタートアップ投資を行っている。
対外活動も積極的に行っており、顧客満足を科学した結果を発表したり、宣伝会議講座では事業開発の講義も実施している。

出版

半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法

PR Times記事

https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/53478>

ZUU online記事

https://zuuonline.com/authors/d7013a35

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